プロセスアセスメントとは
CMMI®や Automotive SPICE®などのモデルを用いたプロセスアセスメントは、どのように行われるのでしょうか。 ここでは、アセスメントの種類、流れ、主要な役割、プロセス改善との関係を、CMMIのアプレイザル要件や ISO/IEC 15504・ISO/IEC 33000ファミリーの要求事項を踏まえて説明します。
1. アセスメントの種類
SEI(米国ソフトウェア工学研究所)のアプレイザル(アセスメント)要件(ARC)では、CMMI®v1.3のアセスメントに対して 次の3つの種類のアセスメントを定義していました。改善は組織レベルで行っていくので、改善のためのアセスメントも組織を対象に代表的な プロジェクトをいくつか選定して、適切なアセスメントクラスを用いて行います。
- クラスA(公式アセスメント):改善活動の達成を評価するとともに、さらなる改善の機会を特定するために行います。
- クラスB(ギャップアセスメント):改善活動を具体的に始める前に、プロセスの強み、弱みを調査分析し、改善点を洗い出すために行います。
- クラスC(ヘルスチェック、簡易アセスメント):日常のプロセスの状況や改善途上の状況を確認したりする時に用いられます。
クラスA、B、Cは厳格さの程度を表し、クラスAが最も厳格なアセスメントになります。
ISO/IEC 33002でも、ほぼ同様の位置づけで、クラス1、クラス2、クラス3のアセスメントクラスを定義しています。ただし、ISO/IEC 15504/33kの 定義は、主にアセスメントの対象とするプロジェクト数に関するもので、アセスメント手順はすべてのクラスで満足しなければなりません。 ISO/IEC 33kのアセスメントもプロセス改善を目的としたアセスメントでは、CMMI®v1.3のアセスメントとほぼ同様なステップを踏みます。
CMMI®v1.3、ISO/IEC 33kとも評価(確認)アセスメントでは、クラスA(クラス1)が求められ属人性の排除、客観性の確保などの観点から 通常2名以上のアセスメントチームで(ARC準拠の場合は少なくとも4名のチームで)実施することが求められます。Automotive SPICE®モデル を用いた通常のプロセス改善アセスメントについても、ISO/IEC 33002に従い、目的に応じたアセスメントクラスとその要求事項を適用します。
ただし、OEMなどの発注者から要求されるAutomotive SPICE®アセスメントは、サプライヤーのプロセス能力評価(発注における リスク評価)が主目的なため、通常、対象プロジェクトは契約に関連するサンプルプロジェクトになります。サプライヤーはこのアセスメント結果を 受けて発注者と協調しつつリスクの元となる弱みの改善に取り組みます。サプライヤーとしては、その特定のプロジェクトに留まらず、改善の成果 を組織の他のプロジェクトにも展開し、組織の能力レベル向上に資することが推奨されます。
(注: CMMI®の最新のアセスメント要件は、 ISACAが発行する「アプレイザル手法定義書(MDD:Appraisal Method Definition Document)」 に定義されており、そこではアセスメントクラスは用途に応じて、Benchmark、Sustainment、Evaluation、Action Plan Reappraisalの4種類が 定義されています。)
2. アセスメントの流れ
アセスメントは概ね次の5つのステップからなります(この定義は、ARCやISO/IEC 33002のアセスメント要求事項に沿っています)。 ISO/IEC 33002では、アセスメントはISO/IEC 33002で定義された要求事項を満足する「文書化したアセスメントプロセス」に従うことが求められています。

- 開始:依頼者はリードアセッサを選定し、アセスメントの目的、目標、使用するモデル、アセスメントに対する要求条件、予算などを相談しながら決定します。
- 準備:リードアセッサは、アセスメントの範囲を依頼者と相談して決定し、アセスメントチームメンバの選定、日程を含むアセスメント計画を作成します。またアセスメントチームの立ち上げを行います。
- データ収集:アセスメントチームは、アセスメント計画に従って、質問票(任意)、インタビュー、文書レビューを通じてデータを収集します。 また、収集したデータに基づいて、モデルのプラクティスの評定を行います。
- 分析と報告:アセスメントチームは、収集した情報を分析して強み、弱み、改善の機会などを特定します。また、公式アセスメント ではモデルのゴールやプロセス属性の評定、成熟度レベル、能力レベルなどを導出します。また、これらの評定値や所見の妥当性を確認します。 最終的な評定値、および、強み、弱みなどの所見をまとめて報告します。報告の形態として、報告会の開催、正式な報告書の作成、スポンサーへの 提出があります。
- 完了:アセスメントの目的、目標、要求条件を満たしたかなどをレビューしてアセスメントを完了します。
3. キー・プレイヤー
- 依頼者:アセスメントの目的、目標、アセスメントに対する要求条件などを定め、資源を提供する。
- 参加者:インタビューに参加し、アセスメントチームに情報を提供する。
- リードアセッサー:アセスメントを計画、管理し、アセスメントの品質を保証する。
- アセッサー:チームとしてインタビュー、文書レビュー等を行い、所見やエビデンスを記録するとともに評定を行う。
- コーディネーター:アセスメントチーム、参加者間の連絡や調整、必要なサポートを提供する。
アセスメントは、原則的に、リードアセッサ、アセッサからなるチームを編成して行うことが求められています (公式アセスメントでは必須)。 資格制度は、使用するアセスメント手法と密接に関係します。
Automotive SPICE®の場合、intacs®がアセッサー資格要件を定めています。 それによると、リードアセッサーを務めるには、コンピテントアセッサー以上の資格が必要で、アセッサーを務めるには プロビジョナルアセッサー資格以上の資格が必要です。

4. プロセス改善との関係
アセスメントで得られた強み、弱み、改善の機会などは、プロセス改善の重要なインプットになります。 組織やプロジェクトの目標に照らして改善の優先順位を決め、改善策を実施し、その効果を確認します。 アセスメントによる能力レベルや成熟度レベルの達成だけでなく、ビジネス目標の達成につなげることが重要です。 プロセス改善の目的や進め方については、プロセス改善の概要で説明しています。
