Automotive SPICE®(A-SPICE / ASPICE)の概要

  1. Automotive SPICE®の概要
  2. Automotive SPICE®の歴史・背景

Automotive SPICE®(A-SPICE / ASPICE)は、車載製品開発の品質/コスト/納期(QCD)などの目標達成の 失敗リスクを低減するために、製品開発プロセスの能力レベルを判定し、プロセス能力を改善するためのプロセスアセスメントモデルです。 現在のAutomotive SPICE® 4.0では、システムエンジニアリング、ソフトウェアエンジニアリングなどのエンジニアリグプロセス、 プロジェクト管理、品質保証、構成管理などの管理支援系プロセスといった、自動車開発に重要なプロセスと能力レベルが体系的に定義されています。 これらの定義は、プロセスアセスメントで使用するだけでなく、開発プロジェクトが自らの開発プロセスを構築し、改善していくための基盤として 使用することができます。

1. Automotive SPICE®の目的

Automotive SPICE®の目的は、製品の開発リスクを低減させることです。能力レベルが低いということは、 製品開発におけるQCDの達成確率が低い(つまり失敗確率が高い)ことを意味します。従って、OEM等の発注者は、サプライヤーに対して 高い能力レベルを期待します。そのため、契約に先だって、サプライヤーのプロセス能力レベルを確認するためのプロセスアセスメント の実施またはアセスメントレポートの提出を求めます。ただし、能力レベルが低ければ発注しないといったような単純なコンセプトでは なく、目的はサプライヤーに対して高い能力レベルを目指すように改善活動を促すことであり、さらには、高度な協業関係を築いていく ための土台を形成することです。サプライヤーの選定は、プロセス能力だけで決まるものではなく、当然ながらサプライヤーの技術力や 組織のマネジメント力も考慮されます。 "SPICE"の"SPI"は、Softwere (又は、System) Process Improvementを意味し、"CE"はCapability Determintionを意味します。前者は、 主にサプライヤーサイドでプロセス改善のために自主的に行うプロセスアセスメントを意味し、後者は、発注者サイドがサプライヤーに 対して行う能力判定のためのプロセスアセスメントを意味します。

2. Automotive SPICE® プロセスアセスメントモデル(PAM)の構成

Automotive SPICE® PAMは、プロセスアセスメントの国際標準であるISO/IEC 33000ファミリー、具体的には、ISO/IEC 33004(プロセス参照 モデル,プロセスアセスメントモデル,及び成熟度モデルのための要求事項)並びに ISO/IEC 33020(プロセス能力のアセスメントのための プロセス測定フレームワーク)に準拠して作られています。
つまり、Automotive SPICE® PAMはISO 9001やISO 26262などの他の国際標準と 違って、プロセスの定義とプロセス能力レベルの定義からなる2次元モデルであることが特徴です。これは、組織やプロジェクトのプロセスを 改善するにあたって、取り組むプロセスの幅を広げるベクトルと、各プロセスの能力レベルを高めるベクトルがあることを示しています。 取り組むべきプロセスは、一つから始めることができ、組織やプロジェクトの達成すべき目標に対して、重要なプロセスから順番に取り組む ことが推奨されます。

2次元モデル Automotive SPICE® PAMでは、各プロセスについて、その目的、期待される成果(プロセス成果)、基本プラクティス、作成すべき作業成果物が定義されています。 また、プロセス能力レベルの定義として、各能力レベルにおける達成すべき成果(達成成果)、共通プラクティス、作成すべき作業成果物が定義されています。 プロセス要素の関係図 プロセスアセスメントでは、実際のプロジェクトのプロセス実施状況をプラクティスや作業成果物に着目して確認し、各プロセスの目的や期待される成果、 達成成果を評定し、能力レベルを判定します。ここで、プラクティスは活動の実施側面を表しているのに対して、成果は結果側面を表していることに注意して ください。また、プラクティスはプロジェクトに対する要求事項ではなく、プロセスアセメントにおける着眼点を示しています。これが意味することは、 活動を実施することが重要なのではなく、しかるべき結果を達成することが重要だということです。

3. Automotive SPICE® 4.0の構成

Automotive SPICE® PAMの2次元モデルの横軸は、プロセスの枠組みを定義しています。つまり、アセスメントで参照するプロセス(プロセス参照モデル)を 定義しています。この内容は、ISO/IEC 33004の要求事項に従って、VDAのワーキンググループ13という委員会で策定しています。 対象となるプロセスは、車載製品で重要であると位置づけられるプロセスです。 一方、縦軸となる能力レベル、達成成果等は、ISO/IEC 33020の内容を踏襲しています。 A-SPICE_Processes

4. Automotive SPICE® 4.0のプロセス

プロセスは、主ライフサイクルプロセスカテゴリー、組織ライフサイクルプロセスカテゴリー、支援ライフサイクルプロセスカテゴリーという3つの カテゴリーからなります。主ライフサイクルプロセスカテゴリーは、製品開発のQCDに直接寄与するプロセス、組織ライフサイクルプロセスカテゴリーは、 プロセスの管理(組織やプロジェクトのプロセス定義、改善、再利用、リソース管理、計画と進捗管理など)に関するプロセス、支援ライフサイクル プロセスカテゴリーは、他のプロセス活動を支援するプロセスのセットです。全部で32個のプロセスが定義されていますが、組織やプロジェクトは、この中 から重要なプロセスを選んでアセスメントと改善に取り組みます。OEMなどの発注者としては、改善に取り組んでほしいプロセスを選定して、サプライヤーに 示します。
4.0における特徴は、あまり使われていないいくつかのプロセスが削除されている一方、ハードウェアエンジニアリングプロセス群、機械学習エンジニアリング プロセス群および機械学習データ管理プロセスならびに妥当性確認プロセスが追加されていることです。メカニカルエンジニアリングプロセス群は、今回の 改訂にはリソース上の理由から含まれませんでした。

5. Automotive SPICE® 4.0の能力レベル

一方、Automotive SPICE® の能力レベルは、図に示すように、レベル0~レベル5の6段階が定義されています。「能力レベル」は、「能力」とは違います。 「プロセス能力」はプロセスを制御して目標をどれだけ達成できるかという指標ですが、「能力レベル」は、目標を達成するために必要な活動がどの程度 定義、実行され、組織やプロジェクトの要員間でノウハウを含めてどれだけ共有されているかという度合いです。プロセスとは活動を意味しますが、 活動を実施するための手順/手法/技法の定義だけではなく、リソース(人的リソース、設備リソース、情報リソース)を管理すること、必要な活動を 実行できるように要員を育成することを含みます。 能力レベルは優れたプロセスはそれだけ高い能力を示すという仮説に基づいています。 能力レベル1は、個人の力量をもとにとにかく目標を達成すること、能力レベル2は、個人的に培ったノウハウをベースにプロジェクトやチームで 手順/手法/技法を共有し、必要なリソースを準備して管理すること、能力レベル3は、能力レベル2で培ったノウハウを含む手順/手法/技法を組織レベル で共有し、必要なリソースを組織的に管理することを目指します。能力レベル3までは、プロセスを定義することに主眼を置きますが、能力レベル4、 能力レベル5は、定義したプロセスの問題を分析して、改善することに主眼を置いています。現行のAutomotive SPICE®では、OEMは現実的な取り組み として、サプライヤーが能力レベル2/能力レベル3の達成を目指して改善活動を実施することを求めています。

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6. Automotive SPICE®アセスメント

Automotive SPICE®のアセスメントは、ISO/IEC 33002(プロセスアセスメント実施に対する要求事項)に従うことが求められています。そこでは、 プロセスアセメントは所定の項目を網羅したアセスメント計画書を策定しアセスメントスポンサー(依頼者)の承認を得ること、アセスメント計画書に 基づいて実行すること、プロセス成果、達成成果を要約したプロセス属性をISO/IEC 33020で定められた評定尺度(F:十分に達成している、L:概ね達成している、 P:部分的に達成している、N:達成していない)または(F、L+、L-、P+、P-、N)を用いて評定すること、少なくとも弱み(目標の達成に影響する活動の 不足事項)を特定すること、アセスメント記録を残すとともに、所定の項目を網羅したアセスメント報告書を作成して、アセスメントスポンサーに提出 することを必要としています。また、アセスメントはリードアセッサーを含む2名以上のアセッサーで実施し、所見や評定結果を合意することなど Automotive SPICE®独自の要件があります。 プロセスアセスメントは、プロセスを評定することが求められますが、評定することが本来の目的ではなく、そこで明らかになった弱みを改善して、 プロセス能力を高めることこそが必要であり、そのための改善計画と改善活動が欠かせません。

7. Automotive SPICE® 3.1からの変更点

Automotive SPICE® 4.0では、3.1からプロセス構成やモデルの内容に大きな変更が行われています。主な変更内容については、 「Automotive SPICE® 4.0 改訂ドラフトの概要」で詳しく述べています。

8. intacs®認証アセッサー資格、資格要件

Automotive SPICE® 4.0 の発行に伴って、アセッサー資格として、新たにプロセスエキスパート資格が新設されました。これは、これまでの経験から アセッサーやプロセス改善に携るには、アセスメントの知識や進め方の理解に留まらず、モデルに関する正しく、深い知識やそれらの利用方法に関する理解が 欠かせないという判断に至ったことを意味しています。

intacsの資格体系 intacsの資格要件

9. intacs® トレーニング体系

プロセスエキスパート資格が新設されたことに伴って、新たにプロセスエキスパート研修コースが設けられました。これまでは、5日間のプロビジョナル アセッサー研修の受講と試験に合格することでプロビジョナルアセッサー資格が得られましたが、今後は、4日間のプロセスエキスパート研修と、同じく4日間の プロビジョナルアセッサー研修を受講し、試験に合格することが求められます。また、ハードウェアエンジニアリング、サイバーセキュリティ、機械学習など のプロセスをアセスメントの対象に加えるには、少なくともアセスメントチームメンバの一人は、関係する研修を受講し、試験に合格している必要があります。 これらの追加的な研修コースをエクステンション(拡張)研修と呼びます。

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10. Automotive SPICE®の歴史・背景

Automotive SPICE®の歴史・背景については、「Automotive SPICE®の歴史・背景」で述べていますので ご参照ください。


※ Automotive SPICE®プロセスアセスメントモデルは、VDA-QMCのサイトからダウンロードできます。 Automotive SPICE<sup>®</sup> PAM ダウンロードダウンロード