歴史 | ISO/IEC 15504・33kとは (1/5)

  1. ISO/IEC 15504・33kの歴史
  2. ISO/IEC 15504・33kの構成と要求事項
  3. ISO/IEC 15504・33kが定める能力水準
  4. ISO/IEC 15504・33kアセスメントモデルが対象としているプロセス
  5. ISO/IEC 15504・33kアセスメント結果の表現

1.1 ISO/IEC 15504の歴史

能力成熟度モデル (CMM)は具体的で有用なものであったため、米国内で広まり、さらに北米や欧州、イギリスでもこれを拡張した類似のモデルが開発され、 使われ始めました。しかしながらグローバルに取引をする上で、このように多くの評価モデルが存在することは混乱や無駄が生じるので、これらを統一したモデル を開発する必要性が国際標準化機構 (ISO)に提起されました。これに伴い、成熟度モデルとそれを用いたアセスメント手法をベースにしたソフトウェアプロセス アセスメントの標準化の取り組みが1992年に開始されました。

標準化にあたっては、以下に示す主要な要求事項が設定されました。

  1. 受発注における供給者のプロセス能力判定と供給者におけるプロセス改善を目的とすること
  2. アプリケーションやプロジェクトサイズなどに対してフレキシブルであること
  3. 文化的に独立であること
  4. プロセスや人、技術も視野に入れること
  5. 成熟度レベルというよりも個々のプロセスの能力レベルを示すこと
  6. ISO9000などの既存標準を支援すること

それまで使われていた主要なモデルが調査され、これらを統合することが試みられました。下図は検討の入力となった主なモデルを示しています。


ISO/IEC 15504検討のインプット

世界各国から数十名というISOの部会としては異例なほどの専門家がその検討に参加しました。この検討チームはSPICEコアチームと呼ばれました。 SPICEとは、Software Process Improvement and Capability dEtermination (最初はEvaluationだったのですが)の略です。会議は英国(国防省)が主査を務め、 各国がエディタを出しましたが、特に基本的なモデルの枠組みは、SEIでCMM®の開発に携わったメンバ (マーク・ポーク、マイク・コンラッド) が主導しました。 コンピータからは、コンピータの創始者であるマック・クレイグマイルが英国国防省の技術サポート役として参加し、特にプロセス改善や能力 評価の部分について議論を促進しました。この活動には日本からもNTTや主要なベンダが参加し、特にISO/IEC 12207との整合性をとることについて積極的に意見 提起して、当初原案では異なっていたプロセスの枠組みを、最終的に同規格と整合させることを実現しました。 モデルの枠組み、特に能力レベルの考え方は、 システムエンジニアリングCMMがベースになっています。


ISO/IEC JTC1/SC7/WG10国際会議 1995年 南ア:ピラネスバーグ wg10国際標準化会合

こうして1998年から1999年にかけて一式の技術レポートであるISO/IEC TR 15504が発行されました。 その後日本を含めた各国での試行を経て見直しが行われ、 2003年から2006年にかけて正式なISO/IEC 15504というソフトウェアプロセスアセスメントの規格一式が誕生しました[1~5]。

検討の当初は、具体的なアセスメントモデルを標準として開発することを目指しましたが、既にCMM®等のモデルの普及が進み、実際、 モデルを乗り換えることは現実的でないなどの意見が寄せられたため、具体的な特定のアセスメントモデルの使用を要求するのではなく、アセスメント モデルの枠組みと実施のための基本的な要求事項を定めることとなりました。 規格の第5部は、ISO/IEC15504の要求事項を満たすアセスメントモデルの 代表例という位置づけです。 後に、いくつかの分野別モデルが開発されるに伴い、第5部のアセスメントモデルは、色がついていないということで、 通称バニラSPICEと呼ばれています。

ISO/IEC 15504の適用としては、欧州では、特にドイツの自動車業界でISO/IEC 15504に準拠した Automotive SPICE® という名前のアセスメントモデルが構築され、ソフトウェア調達への利用が始まりました。日本でもドイツに輸出している 自動車関連の企業はその影響を受けることになりました。その他、医療関係や航空宇宙関係さらには金融への適用の動きがあるようです。 日本では、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)のソフトウエア・エンジニアリング・センタが、2006年度にプロセス改善研究部会を発足させ、 検討の一環としてISO/IEC 15504の具体的な適用に向けた検討を開始しました。


1.2 ISO/IEC 15504からISO/IEC 33kへ

ISO/IEC 15504はソフトウェア開発プロセスを対象にしていましたが、業界ではソフトウェア開発に留まらず、システム開発にフォーカスが拡大し、 さらにサービスプロセスや機能安全など、多様なニーズに対応する必要が生じました。WG10では、2010年以降、そのような動向に柔軟に対応できるように 規格の構成を見直すことを決定しました。それが現在のISO/IEC 33000ファミリの始まりです。
その結果、2015年3月、ISO/IEC 33000ファミリーの中核となる以下の規格が発行されました。2026年現在もこれらの規格が使用されていますが、ISO/IEC 33020は 2019年に改定され、プロセス属性が一部見直されました。

  • ISO/IEC 33001:概念及び用語
  • ISO/IEC 33002:プロセスアセスメント実施に対する要求事項
  • ISO/IEC 33003:プロセス測定フレームワークに対する要求事項
  • ISO/IEC 33004:プロセス参照モデル、プロセスアセスメントモデル及び成熟度モデルのための要求事項
  • ISO/IEC 33020:プロセス能力のアセスメントのためのプロセス測定フレームワーク

ISO/IEC 33kファミリーの概要を 「新アセスメント規格ISO 33Kファミリーの概要」 で詳しく説明します。



(参考資料)
  • ISO/IEC 15504-1 「Software engineering- Process assessment- Part 1: Concepts and vocabulary」
  • (JIS X0145-1:2008 情報技術―プロセスアセスメント―第1部:概念及び用語)
  • ISO/IEC 15504-2 「Software engineering- Process assessment- Part 2:Performing an assessment」
  • (JIS X0145-2:2008 情報技術―プロセスアセスメント―第2部:アセスメントの実施)
  • ISO/IEC 15504-3 「Software engineering- Process assessment- Part 3: Guidance on performing an assessment」
  • ISO/IEC 15504-4 「Software engineering- Process assessment- Part 4: Guidance on use for process improvement and process capability determination」
  • (JIS X0145-4:2010 情報技術―プロセスアセスメント―第4部:プロセス改善及びプロセス能力判定のための利用の手引)
  • ISO/IEC 15504-5 「Software engineering- Process assessment- Part 5: An exemplar Process Assessment Model」
  • Automotive SPICE®Process Reference Model
  • Automotive SPICE®Process Assessment Model


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