ISO/IEC 15504・Automotive SPICEとは (2/5)
- ISO/IEC 15504の歴史
- ISO/IEC 15504の構成と要求事項
- ISO/IEC 15504が定める能力水準
- アセスメントモデルが対象としているプロセス
- アセスメント結果の表現
2. ISO/IEC 15504の構成と要求事項
2.1 ISO/IEC 15504の構成
下図は、ISO/IEC 15504の構成を示しています。

- 第1部は、規格全体の概要と使用している用語を説明しています。
- 第2部は、規格としての要求事項がまとめられています。
- 第3部は、要求事項を踏まえたアセスメント実施のための手引きです。
- 第4部は、アセスメント結果を利用するという側面から、プロセス改善と供給者能力判定のための手引きを提供しています。
- 第5部は、要求事項を満たすアセスメントモデルの代表例です。
2.2 ISO/IEC 15504の要求事項
ISO/IEC 15504は、プロセスアセスメントについて、下記に関する適合性の要求事項を定義しています。 以降、ISO/IEC 15504をISO15504と省略して呼ぶこととします。
(1) プロセス参照モデルに対する要求事項
プロセス参照モデルとは、プリミティブなプロセスそのものの定義です。 アセスメントはプロセスの能力を測定し、改善の機会やリスクを抽出することが目的なので、プロセスの枠組みについて共通の理解が必要です。ISO15504ではそのためのモデルとして、ISO/IEC 12207 ソフトウェアライフサイクルプロセスや、ISO/IEC 15288 システムライフサイクルプロセスを使用することを想定しており、第5部のアセスメントモデル例は、ISO/IEC 12207をプロセス参照モデルとして使用しています。 しかしながら、プロセス参照モデルは必ずしも国際標準でなければならないということではなく、然るべきコミュニティが合意し、以下の条件が満たされていればよいことになっています。 このよい事例がオートモティブSPICEプロセス参照モデル(PRM)です。
- 対象領域、プロセスの記述、必要とする背景、プロセス間の関係を記載していること
- 関係者、コミュニティにおける合意の達成度合い、影響を記載していること
- プロセス定義は一意的であること
- プロセスの記述において、各プロセスの目的と成果(アウトカム)を明確にしていること
ここで、成果とは活動の結果を意味し、プロセスのアウトプットである作業生産物の作成、状態の重要な変化、条件や目標などの制約条件の満足などの項目を含むことになっています。 成果を達成することにより、プロセスの目的が達成されると考えます。
(2) プロセスアセスメントモデルに対する要求事項
プロセスアセスメントモデルとは、アセスメントで直接使用するモデルのことを指しており、以下のことが要求されています。
- 対象となるスコープを定めていること (一つ以上のプロセスと一つ以上の連続した能力水準(レベル)を含む、 など)
- アセスメントモデルとして指標を持つこと。指標とは、プロセスの実装を具体的に示す特性で、具体的な活動の実施、作業生産物、資源/環境としての特性などがあります。
- 指標と「プロセス参照モデルで定義されているプロセス」、「ISO15504が定める各能力水準とその属性」との対応関係を明確にすること。
- アセスメント結果の表現として、プロセスプロファイルを使用すること。 プロセスプロファイルとは、アセスメントした各プロセスの各属性に対する評定値一式のことを指します。 評定値は、F (Fully)、L (Largely)、P (Partially)、N (Not) という満足度に関する4段階のスケールで表現することになっています。
(3) プロセスアセスメントに対する要求事項
アセスメントは、文書化されたアセスメント手順に基づいて実施しなければなりません。そして、アセスメント手順は、少なくとも次の5ステップを含まなければなりません。
- アセスメントの計画
- データの収集
- 妥当性の確認
- 属性の評定
- 報告
2.3 アセスメントモデルの構造
下図は、ISO15504が規定しているプロセスアセスメントモデルの構造を示しています。
ISO15504では、プロセスごとの能力水準(レベル)を評定します。プロセスの枠組みは、プロセス参照モデルから、能力水準(レベル)は、ISO15504で規定された能力水準から選ばれます。

3. ISO/IEC 15504が定める能力水準 へ
【動向】
「新アセスメント規格ISO 33Kシリーズの概要」