ISO/IEC 15504・Automotive SPICEとは

  1. ISO/IEC 15504の歴史
  2. ISO/IEC 15504の構成と要求事項
  3. ISO/IEC 15504が定める能力水準
  4. アセスメントモデルが対象としているプロセス
  5. アセスメント結果の表現

1. ISO/IEC 15504の歴史

能力成熟度モデル (CMM)は具体的で有用なものであったため、米国内で広まり、さらに北米や欧州、イギリスでもこれを拡張した類似のモデルが開発され、使われ始めました。しかしながらグローバルに取引をする上で、このように多くの評価モデルが存在することは混乱や無駄が生じるので、これらを統一したモデルを開発する必要性が国際標準化機構 (ISO)に提起されました。これに伴い、成熟度モデルとそれを用いたアセスメント手法をベースにしたソフトウェアプロセスアセスメントの標準化の取り組みが1992年に開始されました。

標準化にあたっては、以下に示す主要な要求事項が設定されました。

  1. 受発注における供給者のプロセス能力判定と供給者におけるプロセス改善を目的とすること
  2. アプリケーションやプロジェクトサイズなどに対してフレキシブルであること
  3. 文化的に独立であること
  4. プロセスや人、技術も視野に入れること
  5. 成熟度レベルというよりも個々のプロセスの能力レベルを示すこと
  6. ISO9000などの既存標準を支援すること

それまで使われていた主要なモデルが調査され、これらを統合することが試みられました。下図は検討の入力となった主なモデルを示しています。



ISO/IEC 15504検討のインプット


世界各国から数十名というISOの部会としては異例なほどの専門家がその検討に参加しましした。この検討チームはSPICEコアチームと呼ばれました。SPICEとは、Software Process Improvement and Capability dEtermination (最初はEvaluationだったのですが)の略です。会議は英国(国防省)が主査を務め、各国がエディタを出しましたが、特に基本的なモデルの枠組みは、SEIでCMM®の開発に携わったメンバ (マーク・ポーク、マイク・コンラッド)が主導しました。 コンピータからは、コンピータの創始者であるマック・クレイグマイルが英国国防省の技術サポート役として参加し、特にプロセス改善や能力評価の部分について議論を促進しました。この活動には日本からもNTTや主要なベンダが参加し、特にISO/IEC 12207との整合性をとることについて積極的に意見提起して、当初原案では異なっていたプロセスの枠組みを、最終的に同規格と整合させることを実現しました。 モデルの枠組み、特に能力レベルの考え方は、システムエンジニアリングCMMがベースになっています。
ISO/IEC JTC1/SC7/WG10国際会議 1995年 南ア:ピラネスバーグ

こうして1998年から1999年にかけて一式の技術レポートであるISO/IEC TR 15504が発行されました。 その後日本を含めた各国での試行を経て見直しが行われ、2003年から2006年にかけて正式なISO/IEC 15504というソフトウェアプロセスアセスメントの規格一式が誕生しました[1〜5]

検討の当初は、具体的なアセスメントモデルを標準として開発することを目指しましたが、既にCMM®等のモデルの普及が進み、実際、モデルを乗り換えることは現実的でないなどの意見が寄せられたため、具体的な特定のアセスメントモデルの使用を要求するのではなく、アセスメントモデルの枠組みと実施のための基本的な要求事項を定めることとなりました。 規格の第5部は、ISO/IEC15504の要求事項を満たすアセスメントモデルの代表例という位置づけです。 後に、いくつかの分野別モデルが開発されるに伴い、第5部のアセスメントモデルは、色がついていないということで、通称バニラSPICEと呼ばれています。

ISO/IEC 15504の適用としては、欧州では、特にドイツの自動車業界でISO/IEC 15504に準拠したAutomotive SPICE®[6,7]という名前のアセスメントモデルが構築され、ソフトウェア調達への利用が始まりました。日本でもドイツに輸出している自動車関連の企業はその影響を受けることになりました。その他、医療関係や航空宇宙関係さらには金融への適用の動きがあるようです。日本では、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)のソフトウエア・エンジニアリング・センタが、2006年度にプロセス改善研究部会を発足させ、検討の一環としてISO/IEC 15504の具体的な適用に向けた検討を開始しました。



(参考文献)
  1. ISO/IEC 15504-1 「Software engineering- Process assessment- Part 1: Concepts and vocabulary」
    (JIS X0145-1:2008 情報技術―プロセスアセスメント―第1部:概念及び用語)
  2. ISO/IEC 15504-2 「Software engineering- Process assessment- Part 2:Performing an assessment」
    (JIS X0145-2:2008 情報技術―プロセスアセスメント―第2部:アセスメントの実施)
  3. ISO/IEC 15504-3 「Software engineering- Process assessment- Part 3: Guidance on performing an assessment」
  4. ISO/IEC 15504-4 「Software engineering- Process assessment- Part 4: Guidance on use for process improvement and process capability determination」
    (JIS X0145-4:2010 情報技術―プロセスアセスメント―第4部:プロセス改善及びプロセス能力判定のための利用の手引)
  5. ISO/IEC 15504-5 「Software engineering- Process assessment- Part 5: An exemplar Process Assessment Model」
  6. Automotive SPICE®Process Reference Model
  7. Automotive SPICE®Process Assessment Model


2. ISO/IEC 15504の構成と要求事項 へ



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CMMI, ISO33kリポジトリ

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コンピータの沿革
コンピータは、品質改善の専門家集団として1991年に英国で設立されました。プロセス能力評価手法や改善手法の開発、SW-CMM®、CMMI®をはじめとする各種ベストプラクティスモデルへの取り組みを進め、SPICE (ISO/IEC 15504)プロジェクトでは、英国国防総省、米国SEIとともに標準化のリーダシップをとりました。
それらを通じて培われたPPAアセスメント手法は、ISO/IEC 15504/33000シリーズおよびSEIのARCに完全に準拠した世界的な手法です。
コンピータは、ベストプラクティスモデルの研修、資格認定、アセスメント、コンサルティングを通じて、皆様の持続可能で真に効果的なプロセスの改善をご支援いたします。