CMMI (5/5)アセスメント

CMM® | CMMI®とは (5/5)

  1. CMM | CMMIの歴史
  2. 組織成熟度
  3. CMMIで規定されるプロセス領域
  4. 段階表現と連続表現
  5. CMMIとアプレイザル(アセスメント)

5. CMMIとアプレイザル(アセスメント)

CMMI®やAutomotiveSPICE®などのモデルはプロセスアセスメントモデルと呼ばれ、プロセスの改善や供給者の選定と管理に利用されます。

製品を構成するソフトウェアの複雑化、大規模化、調達のグローバル化に伴い、製品の開発、サービスの提供のためのプロセスは、国際的に調和がとれ、全体的に最高のパフォーマンスを発揮できることが求められます。このことは、それぞれの企業におけるプロセス改善努力は勿論のこと、その供給者も巻き込んだサプライチェーン全体の改善が必要であることを意味します。CMMI®などのプロセスアセスメントモデルはベストプラクティスモデルとも呼ばれ、モデルに照らして、自社や供給者の強み、弱みを分析し、そこから改善の機会やリスクを特定して改善活動に結びつけることが行われます。アプレイザルやアセスメントは、そのための活動であり、成熟度レベルや能力レベルを判定することが主たる目的ではありません。また、モデルはどれも万能とは言えません。事業目標の達成に適切なモデルを選択することが望まれます。

プロセスアセスメントモデルとアプレイザル(アセスメント)、プロセス改善の関係を以下に示します。


アセスメントモデル、アセスメント及びプロセス改善


SEIのアセスメント手法であるSCAMPISMはCMMI®のみを対象にしているのに対して、PPAは、CMMI®はもとより、ISO/IEC 15504/33k、AutootiveSPICE®を含む複数のモデルに対応しています。また、SEIのアプレイザル要求事項であるARCを満たすとともに、プロセスアセスメントの国際規格であるISO/IEC 15504/33000シリーズの要求事項も満たしています。

アプレイザルもアセスメントも日本語では一般的に「評価」と訳されますが、「評価」にはエバリュエーションの意味もあり、類似した言葉には監査や審査という言葉もあります。そのため、さまざまな混乱や誤解が生じがちです。プロセスアセスメントモデルを利用する上で用いられるアプレイザルやアセスメントという言葉は、監査や審査ではなく、前述したように「自社や供給者の強み、弱みを分析し、そこから改善の機会やリスクを特定して改善活動に結びつける」という特定の活動を意味します。監査や審査は所与の要求事項に従っているかどうかを評価することを意味しますが、プロセスアセスメントモデルは必ずしも要求事項ではありません。すなわち、その通りに実行することに価値があるというより、それを通じて最高のパフォーマンスを発揮するための改善の機会を発見することにこそ真の価値があります。

アプレイザルという言葉は、SEIがCMMI®以降、それまでのCMM®時代に用いていたアセスメントとエバリュエーションという言葉に代えて用いるようになりました。アセスメントはプロセス改善を目的とした場合に、エバリュエーションは供給者選定管理を目的とした場合に使用されてきました。CMMI®以降、これらを統合した言葉として、アプレイザルという言葉が用いられています。ISO/IEC15504/33kの中では、アプレイザルのことを、アセスメントという言葉で表しています。

ISO 9001の世界では、アセスメントとオーディット(監査)は同義ですが、プロセスアセスメントの世界では、意味が異なります。また、審査という言葉は、プロセスアセスメントの世界では用いません。

審査という言葉は、ISO9001の審査登録制度のもとに、第三者認証に伴う言葉として用いられるようになりました。プロセスアセスメントでは、第三者による審査登録制度というものはなく、組織が自ら改善のために行うアセスメント(第一者)、発注者が供給者選定管理のために行うアセスメント(第二者)しかありません。すなわち、発注者、供給者から独立した第三者としての審査登録機関というものは存在しません。SEIやコンピータのWebにアセスメント結果が掲載されるサービスが行われていますが、それはSEIやコンピータが企業のベンチマーキング支援のために行っているものであり、紛らわしいのですが、SEIやコンピータが、ISO9001の審査登録機関のように、組織の成熟度レベルを保証しているわけではありません。プロセスアセスメントの結果に対する説明責任は、三者的な機関にあるのではなく、アセスメントしたアセスメントチームにあります。