昨年11月に「ナイチンゲールに学ぶデータ活用術」という副題をつけたワークショップを行いましたが、最近になって、ナイチンゲールとデータ分析が結びつかないというご指摘をいただきましたので、この場で補足させていただきます。
ナイチンゲールというと献身的な看護をした白衣の天使というイメージが強いのですが、実は、語学、哲学、歴史、美術、地理、天文学などあらゆる学問に精通していた上に、政治力にも秀でたスーパーウーマンだったのです。あらゆる学問の中には統計学も含まれていて、円グラフもなかった時代に様々なグラフを自ら創出し、クリミア戦争での負傷による死者より伝染病による死者が圧倒的に多いことを示すために活用しました。これらのグラフに加え、兵舎や病院設計の改善提案などをまとめた報告書を、英国陸軍の衛生状態の改革を検討するための委員会に提出し、英国の医療衛生改革が行われていくわけです。
<参考文献> 「ナイチンゲールは統計学者だった!」 統計の人物と歴史の物語、丸山健夫 著、日科技連
宮崎 幸生 について
みやざき ゆきお
プロセス&メジャメント 代表
■1973年、富士通株式会社入社。アプリケーションパッケージの開発に従事。1976年、黎明期のソフトウェアエンジニアリングの研究・開発に取り組む。以降、ソフトウェアエンジニアリングの中でもソフトウェア測定と分析を中心とした管理手法の分野に一貫して従事。ソフトウェア開発に関わるデータの実態を熟知した上で、1980年代から、ソフトウェアデータの分析にロバストな統計手法を取り入れる。1994年には独自にロバストな回帰分析手法(r最小二乗法)を考案した。2001年、ソフトウェアの見積モデルに関する研究で博士号を取得。2002年、CMMリードアセッサ、続いてCMMIリードアプレイザの資格を取得。現在は、富士通クオリティ・ラボ株式会社と契約をしながら、富士通および関係会社でのデータ分析やプロセス改善に関する教育、講演、コンサルティングを行うと共に、JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)、ソフト・リサーチ・センター、日本テクノセンターなどでのセミナーを行っている。
■主な論文/書籍:
“COCOMO Evaluation and Tailoring”, International Conference on Software Engineering(ICSE), 1985
“Software Metrics Using Deviation Value”, ICSE, 1987
“Robust Regression for Developing Software Estimation Models”, The Journal of Systems and Software, 1994
「ソフトウェア品質保証システムの構築と実践」、ソフト・リサーチ・センター、2008
■資格: CMMI
® リードアプレイザ、博士(工学)